高齢者おひとり様が亡くなったときの現実 八王子市×行政書士の現場から

少子高齢化が進む現代社会において、身寄りのない高齢者、いわゆる「おひとり様」の問題がますます顕在化しています。特に亡くなった後の対応については、国で統一されたルールが存在せず、市町村ごとに実務対応が分かれているのが現状です。本記事では、私(伊橋行政書士)が八王子市で実際に関わった事例をもとに、「おひとり様」が亡くなった後に何が起きるのか、その現実と課題を詳しく解説します。

1. 八王子市における「おひとり様」死亡後の実務フロー

八王子市では、身寄りのない方が亡くなると、市役所や福祉施設、行政書士など関係機関が連携して対応を進めます。以下は、おおまかな流れです。

  1. 死亡確認~行政通報
    まず、施設職員や近隣住民が死亡を確認し、市役所の福祉窓口に通報。
  2. 遺体の安置・行政判断
    自治体によっては業者が遺体の搬送・安置を行い、葬儀の有無を判断。
  3. 会計処理・清算
    公共料金や賃貸物件の解約手続きが行われる。
  4. 相続財産の処理
    預貯金や不動産など、遺産がある場合は任意後見人や公的代理人が管理し、裁判所が関与するケースもあります。

なぜ「おひとり様」の孤独死が起こるのか?

孤独死が増加する背景には、社会構造の変化があります。核家族化が進み、子どもがいない、あるいはいても遠方に住んでいるケースが多くなりました。さらに、配偶者に先立たれた後の高齢者は一人暮らしになりやすく、地域との関わりも希薄になりがちです。

一方で、本人が「迷惑をかけたくない」という思いから、周囲に助けを求めずに孤立してしまうケースも少なくありません。病気や事故によって突然亡くなっても、誰にも気づかれず数日〜数週間発見されないという事態が現実に起こっています。

親族がいても「対応できない」事情

「身寄りがない」と言っても、実際には親族がいる場合もあります。しかし、次のような理由で関与を拒否する例が増えています。

  • 長年交流がなく、どこに住んでいるかもわからない
  • 相続トラブルを避けたい
  • 負債や遺品整理の負担を避けたい
  • 仕事や家庭の事情で対応する時間や余裕がない

このような理由から、親族がいても連絡が取れなかったり、協力を拒否されることがあります。その結果、行政や地域が対応を担うことになり、対応に追われることになるのです。

自治体の支援にも限界がある

八王子市のように支援体制が比較的整っている自治体でも、予算や人員には限界があります。死亡後の事務手続き、火葬、遺品整理、相続問題まで行政がすべて対応するのは現実的ではありません。

そのため、行政書士などの専門家やNPOとの連携が重要になります。民間と公的支援が協力することで、ようやくスムーズな対応が可能になるのです。

2. 統一ルールがないことで生じる「ズレ」とは?

国では明確に定められた統一基準がなく、市町村ごとの対応に差があるため、現場ではこんな問題が起こります。

  • 遺体の安置期間や葬儀実施判断のばらつき
    例えば八王子市では安置期間後の火葬判断までを自治体が行う一方、他市では家族がいない限り火葬もされないケースがある。
  • 預貯金口座の凍結・利用停止タイミングの違い
    凍結までの期間が自治体により異なり、公共料金支払いなどでトラブルになることも。
  • 相続の専門支援体制に差
    八王子市には行政書士やNPOが連携した「おひとり様支援」の仕組みがあるが、地域によっては存在しないことも。

3. 行政書士としての視点:八王子市で直面したリアルな事例

実際に私が支援したケースを3つご紹介します。

事例①:銀行口座に数百万の貯蓄があったケース

口座が凍結され利用できず、光熱費の支払いが滞る心配がありました。預金管理をどうするか、司法書士や裁判所とも連携しながら、遺産整理人を立てて解決しました。

事例②:賃貸アパートで孤独死後、部屋に私物が残されたケース

解約手続き・遺品整理・清掃と、行政と連携しながら家主との交渉を行う中で、専門的な注意点が多々発生しました(遺品の廃棄判断、荷物の保管期間など)。

事例③:借金がある高齢者の遺産処理

遺産よりも負債が多い場合、相続放棄を検討する必要があります。相続放棄申請には3ヶ月以内の家庭裁判所への手続きが必須であり、行政書士として適切なアドバイスが求められました。

4. 八王子市の対応体制と他自治体との比較

八王子市には福祉・住民サービスの充実に加え、定期的に行政書士会やNPO団体との連携会議があり、「おひとり様」が亡くなった時のワンストップ支援体制が整っています。

一方で全国にはこうした体制が整っていない地域も多く、行政に判断が一任される部分が多く残ります。たとえば高齢者見守り対策や連絡体制の整備が不十分な市町村も多く見受けられます。

5. 統一ルールがなぜ必要か?行政書士から見た提案

  • 遺体安置・火葬期間の明文化
    安置期間や火葬判断の基準を明文化し、全国どこでも透明性を確保すべきです。
  • 凍結口座の取り扱いルール化
    公共料金支払いなど最低限の資金は、専門家の関与を条件に利用可とする枠組みが望ましい。
  • 公的代理人制度の全国整備
    遺産整理や相続放棄を、専門家が関与しやすい制度に改善すべきです。

6. まとめ:八王子市モデルから全国へ

八王子市の実務対応は「おひとり様問題」における先進的取り組みと言えます。しかし、国としての統一ルールがまだ整備されていないため、地域間格差も大きいのが実情です。行政書士としては、現場の声を集め、全国的な制度改革に向けた提言を続けていきたいと考えています。

7. 相談のご案内:伊橋行政書士にお任せください

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