はじめに — 世界共通の課題となった「おひとり様老後」
こんにちは。八王子市の伊橋行政書士です。
きょうは少し視点を変えて、高齢者おひとり様終活を海外と比較してみましょう。
「おひとり様」という言葉が、日本でごく自然に使われるようになって久しくなりました。未婚の方、離婚された方、配偶者に先立たれた方。理由はさまざまですが、人生の最終章を一人で迎える方が増えているのは、日本だけの現象ではありません。
実は今、アメリカでも同じ課題に直面しています。2025年から2026年にかけて発表された複数の海外ニュースを見ると、「おひとり様での老後」が新しい常態になりつつあることがわかります。
この記事では、アメリカで今起きている「おひとり様老後」の実情をご紹介しながら、日本の高齢者の皆さまが直面する課題と対比し、これからの終活支援のあり方について考えていきます。
アメリカでは3世帯に1世帯が「おひとり様」— 日本も同じ道をたどる?
アメリカの経済誌『Forbes』が2025年11月に報じたところによると、現在アメリカでは**約3世帯に1世帯が単身世帯**だそうです。特に女性の高齢者は、60代で27%、75歳以上になると43%が一人暮らしをしています。
日本ではどうでしょうか。総務省の統計によれば、2020年時点で65歳以上の単独世帯は約736万世帯。高齢者世帯全体の28.8%を占めています。さらに、2040年には高齢者の約4割が一人暮らしになると予測されています。
つまり、日米ともに「おひとり様で老後を迎える」ことが、もはや特別なことではなくなっているのです。
「シングル税」という現実 — おひとり様が負担する見えないコスト
アメリカでは、一人暮らしをする人が負担する余分なコストを「シングル税(Singles Tax)」と呼んでいます。家賃、光熱費、食費、保険料、インターネット代、病院への交通費……すべてを一人で負担しなければなりません。
さらに、目に見えない負担もあります。
料理、掃除、洗濯、ゴミ出し、買い物、通院、服薬管理、請求書の支払い、家の修繕手配。夫婦であれば自然と分担できていたこれらの家事や雑務を、おひとり様はすべて一人でこなさなければなりません。
アメリカの専門家は、こうした日常のタスクを「自立のための活動(Activities of Daily Living / Instrumental ADL)」と呼んでいます。若いうちは当たり前にできていたことが、加齢とともに少しずつ負担になっていく。その小さな積み重ねが、やがて大きな壁になるのです。
誰も「今日どうだった?」と聞いてくれない孤独
『CNBC』が2025年3月に報じた記事では、心理学者が一人暮らしの課題についてこう語っています。
「一人暮らしでは、家に帰ったときに誰も『今日どうだった?』と聞いてくれる人がいません。だからこそ、意識的にサポートネットワークを築くことが大切なのです」
日本でも同じではないでしょうか。おひとり様の高齢者の方からよく聞くのは、「誰とも話さない日がある」「具合が悪くても、誰にも気づいてもらえないかもしれない」という不安の声です。
経済的な準備だけでなく、社会的なつながりをどう維持していくか。これが、おひとり様老後を安心して過ごすための大きな鍵になります。
アメリカで急増する「相続を今すぐ欲しい」問題 — 日本でも起こりうる家族間トラブル
さらに深刻なのが、家族間での経済的なトラブルです。
アメリカでは今、生活費の高騰に苦しむ若い世代が、親や祖父母に対して「相続を今すぐ渡してほしい」と圧力をかける「相続焦り(Inheritance Impatience)」という現象が問題化しています。
2025年12月に発表された調査によると、アメリカのミレニアル世代の69%、Z世代の63%が「相続は自分の経済的安定に極めて重要」と回答しています。住宅価格の高騰、物価上昇、賃金の伸び悩み……若い世代が経済的に追い詰められている背景があるのです。
その結果、高齢者が脅迫まがいの圧力を受けて財産を譲渡させられたり、医療費や介護費用を使わないよう制限されたりする事例が増えているといいます。アメリカでは年間約283億ドル(約3兆円)もの高齢者経済的虐待が発生していると推計されています。

日本でも、「生前贈与」「任意後見」「家族信託」などの制度が広がる一方で、家族間のトラブルや不正な財産管理の問題が表面化しています。特におひとり様の場合、頼れる家族が限られているため、親族や第三者による不当な影響を受けやすいリスクがあります。
デジタル遺産という新しい課題 — 日本の終活にも必要な視点
2026年1月、アメリカのシニア向けメディア『AllSeniors.org』が「デジタル遺産計画ガイド」を発表しました。
デジタル遺産とは、オンライン銀行口座、SNSアカウント、メールアドレス、サブスクリプションサービス、デジタル写真、さらには暗号資産(仮想通貨)など、インターネット上に存在する資産や情報のことです。
アメリカでは現在、多くの州で電子遺言(e-Will)が法的に認められるようになり、デジタル委任状によってオンラインアカウントへのアクセス権を信頼できる人に託せる仕組みが整いつつあります。
日本ではどうでしょうか。まだまだ「デジタル終活」という概念は広まっていませんが、スマートフォンやパソコンを使う高齢者が増えている今、デジタル資産の管理と相続対策は避けて通れない課題になっています。
ネット銀行のログイン情報、証券口座、電子マネー、クレジットカードの自動引き落とし……。もし突然何かあったとき、ご家族がこれらにアクセスできなければ、大きな混乱を招くことになります。
日本のおひとり様終活支援 — 私たちが大切にしていること
日本でも、おひとり様の終活支援は確実に広がっています。行政書士として相続・遺言のサポートを行う中で、私たちが特に大切にしているのは以下の3つです。
1. 法的な準備と意思の明確化
遺言書の作成、任意後見契約、死後事務委任契約、尊厳死宣言(リビングウィル)など、法的な書面をきちんと整えることで、ご本人の意思を明確にし、ご家族やご親族とのトラブルを未然に防ぎます。
2. 入院・施設入居時の身元保証サポート
おひとり様にとって大きな不安の一つが、入院や高齢者施設への入居時に「身元保証人」を求められることです。家族がいない、または頼れない場合、私たちのような専門職が身元保証人や緊急連絡先の役割を担います。
3. 葬儀・供養までの一貫したサポート
亡くなった後の葬儀手配、納骨、供養、遺品整理、各種手続き。これらすべてを生前に契約しておくことで、ご本人も、残されるご家族も安心できます。
アメリカの記事で指摘されていた「誰にも気づかれない孤独」は、日本でも同じです。だからこそ、生前から信頼できる専門家とつながり、「何かあったときに動いてくれる人」を確保しておくことが、何よりも重要なのです。
おわりに — 「おひとり様」だからこそ、早めの準備を
海外の事例を見てわかるのは、おひとり様の老後は世界共通の課題であり、どの国でも試行錯誤しながら制度や支援の形を模索しているということです。
日本の60代後半から80代の皆さまにとって、今はまさに「準備の適齢期」です。元気なうちに、信頼できる専門家と出会い、法的な書類を整え、デジタル資産も含めた「人生の棚卸し」をしておくこと。それが、ご自身の安心と、大切な人への思いやりにつながります。
おひとり様だからといって、決して孤独である必要はありません。「一社いきいきライフ協会八王子東・伊橋行政書士法務事務所」は、法律の専門家として、そして人生の伴走者として、皆さまの「最期まで自分らしく生きる」を全力でサポートいたします。
どうぞお気軽にご相談ください。
一社)いきいきライフ協会八王子東・伊橋行政書士法務事務所
TEL 042-678-5225
参考記事:
– Forbes “Retiring Single And Paying Double: The Hidden Costs Of Aging Alone” (2025年11月11日)
– ElderLawAnswers.com “Affordability, Elder Financial Abuse, and Estate Planning” (2025年12月3日)
– AllSeniors.org “2026 Guide to Digital Estate Planning for Senior Legal Rights” (2026年1月10日)
– CNBC “Psychologist’s top tips for living alone without feeling lonely” (2025年3月20日)