相続人に認知症の人がいる場合の遺産分割協議の進め方

日本の高齢化が進む中、相続人の中に認知症の方が含まれるケースが年々増えています。
このような場合、通常の遺産分割協議を進めることができず、特別な手続きを踏む必要があります。
今回は、認知症の相続人がいる場合の遺産分割協議の注意点や、スムーズに進めるための対策について解説します。

認知症の相続人は遺産分割協議に参加できる?

民法では、遺産分割協議に参加する相続人には「意思能力」が求められています。
認知症が進行し、本人の意思表示が困難な場合には、この意思能力がないと判断されることがあります。
その結果、協議にそのまま参加することができず、無効な協議とみなされるおそれもあります。

また、たとえ軽度の認知症であっても、判断能力に疑義がある場合は、相続手続きの正当性が後に争われる可能性があります。
したがって、認知症の相続人がいる場合は、早い段階で「成年後見制度」の利用を検討することが重要です。

成年後見制度の活用方法

成年後見制度とは、判断能力が不十分な方に代わって法律行為を行う「後見人」を家庭裁判所が選任する制度です。
この制度を活用することで、認知症の相続人の代理として後見人が遺産分割協議に参加することが可能になります。

後見人の選任には、家庭裁判所への申し立てが必要です。
申し立てが認められるまでに、平均して2〜3ヶ月程度かかることが多く、費用もかかります(収入印紙代、鑑定費用、専門職後見人への報酬など)。
しかし、後見人を通して遺産分割協議を行うことで、法的に有効な協議が可能となり、将来的なトラブルのリスクを大幅に減らすことができます。

なお、後見人が選任された後は、その人の利益を最優先に考えて判断が行われます。
たとえば、特定の相続人だけが多く相続する内容には同意が得られにくい場合もあるため、協議内容にも配慮が必要です。

トラブルを避けるための生前対策

認知症による相続トラブルを避けるためには、やはり生前の対策が重要です。
以下のような方法が有効です。

1. 公正証書遺言の作成
将来の相続について意思を明確に示しておくことができる最も確実な方法です。
公証人と証人の立ち会いのもとで作成されるため、偽造や無効のリスクが少なく、トラブル回避に効果的です。

2. 家族信託の活用
財産の管理や承継について、本人が元気なうちに信頼できる家族に任せる制度です。
柔軟な財産管理が可能となり、認知症による意思能力喪失後もスムーズな対応が可能になります。

3. 任意後見契約
将来判断能力が低下したときのために、信頼できる人に代理権を与える契約です。
家庭裁判所の監督のもとで後見人が活動するため、安心感があります。

まとめ:早めの備えが遺産分割をスムーズにする

認知症の相続人がいる場合、遺産分割協議は一筋縄ではいきません。
協議そのものが無効とされるリスクや、手続きが大幅に遅れる可能性を考えると、早期に対策を講じることが重要です。

公正証書遺言や家族信託、任意後見制度といった制度を活用することで、相続人が安心して協議を進められる環境を整えることができます。
特に、相続人に高齢者が多いご家庭では、早めの専門家:「八王子多摩相続遺言お悩み相談所」:「伊橋行政書士法務事務所」への相談が将来の安心につながります。

当事務所では、認知症や成年後見制度に関するご相談も随時受け付けております。
「うちはまだ大丈夫」と思っていても、相続は突然発生するものです。
いざというときに慌てないためにも、今からできる準備を始めてみませんか?

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