相続で本当に守りたいのは、財産よりも家族の関係ではないか
こんにちは。東京は多摩地区八王子市の「感情翻訳家行政書士」の伊橋です。
母の要望で、庭の草むしりの一日でした。
相続のご相談をいただいたとき、私が最初にお伺いするのは「財産がいくらあるか」ではありません。「ご家族は、これまでどんなふうに過ごしてこられたのですか」というところから、お話を聴かせていただきます。
なぜなら、相続でいちばん深く傷つくのは、財産そのものではなく、家族の関係だからです。私は行政書士として、遺言書や遺産分割協議書といった書類をつくらせていただいていますが、その書類の向こう側には、いつも「人」と「家族の時間」があります。私は自らを「感情翻訳家行政書士」と呼んでいます。言葉にならない想いをくみ取り、ご家族のあいだで伝わる言葉に翻訳することが、私のいちばん大切な仕事だと考えているからです。
相続で本当に守りたいのは、財産よりも家族の関係です
相続というと、どうしても「誰がいくら受け取るか」という話に見えます。もちろん金額は大切です。暮らしがかかっていますから、いい加減にできる話ではありません。ただ、手続きが終わったあとに残るのは、通帳の残高ではなく、ご家族の関係です。
「あのとき、ああいう言い方をされた」。そうした記憶は、何十年も残ります。反対に、「あのとき、兄がよく動いてくれた」という記憶も、同じように残ります。相続は、家族の歴史が集まってくる場面です。だからこそ私は、財産の分け方と同じくらい、その後も家族が穏やかに付き合っていけるかどうかを大切にしています。
仲の良い家族ほど、話が難しくなる理由
意外に思われるかもしれませんが、仲の良いご家族ほど、相続の話が難しくなることがあります。「うちは仲が良いから、話さなくても大丈夫」と思っているうちに、それぞれが別々の期待を胸に抱えてしまうのです。
長男は「自分が家を継ぐものだ」と思い、長女は「介護は自分がしてきた」と思い、次男は「何も言われていないから、自分は関係ない」と思っている。誰も悪くありません。ただ、言葉にしていないだけなのです。仲が良いからこそ、波風を立てたくない。その遠慮が、すれ違いを生みます。
高齢の親御さんが願っているのは、たぶん「子どもたちに仲良くいてほしい」ということです。財産を均等に分けたいという願いの奥にも、必ず「争ってほしくない」という気持ちがあります。私は、そこに耳を澄ませたいと思っています。
「平等」と「公平」は、同じ言葉ではありません
法律は、原則として相続人それぞれの法定相続分を定めています。これは守るべき土台です。ただ、土台と、家族が感じる納得は、必ずしも同じものではありません。
数字では測れない貢献があります
長い間、親の介護を担ってきた方がいらっしゃいます。仕事と家庭の合間を縫って通い、夜中に電話が鳴れば駆けつけ、病院の付き添いを重ねてきた方です。その時間と労力は、相続の場面では数字として表れません。
数字で分ければ平等です。けれど、これまでの関わり方や、背負ってきた時間まで含めて考えるのが、家族にとっての公平さなのだと思います。平等は法律が用意してくれますが、公平は、ご家族が言葉を尽くしてつくり上げていくものなのです。
私は、こうした「見えない貢献」にこそ、敬意を払うべきだと考えています。一方で、遠くに住んでいて通えなかった方にも、それぞれの事情があります。だから私は、どちらか一方の立場だけを正しいと決めつけることはしません。ただ、家族のために尽くしてきた人が「報われない」と感じる社会のままでは、これから先、誰が家族を支えるのでしょうか。
相続には寄与分や特別受益という制度がありますが、それを主張するかどうかは、家族の関係にも関わります。手続きの前に、まず「なぜそう感じているのか」を聴く。ここを飛ばしてしまうと、書類は整っても、気持ちは整いません。
私は、家族のことを考えて相続に向き合う人を応援したい
相続の現場では、さまざまな方にお会いします。自分の取り分だけを主張する方もいれば、「もめ事は嫌だから、自分は何もいりません」と、すべてを飲み込もうとする方もいます。
私が応援したいのは、後者の方です。ただし、我慢し続けてほしいという意味ではありません。
自分の希望を伝えることは、わがままではありません
「家族を大切にしたい」という気持ちと、「自分の正当な希望を伝える」ということは、両立できます。むしろ、伝えないまま譲ってしまうと、心の奥にしこりのようなものが残ります。それはやがて、別の形で家族の関係に影を落とします。
ですから私は、遠慮している方にはこうお伝えします。「あなたがどうしたいのかを、まず言葉にしてみてください」と。そのうえで、相手の立場も含めて、どう着地させるかを一緒に考えます。感情を翻訳するというのは、気持ちを抑え込むことではなく、伝わる形に整えることなのだと思います。
相続は、亡くなってから考えるものという常識を変えたい
日本では、相続や財産の話を家族ですることが、どこかタブー視されてきました。「縁起でもない」と言われてしまう。私も、その気持ちはよくわかります。
ただ、相続は亡くなってから考えるもの、という常識は、そろそろ変えていいのではないかと思います。元気なうちに話しておけば、家族は準備ができます。準備ができていれば、不安も減ります。
子ども世代が話を切り出せないのは、往々にして「財産目当てだと思われたくない」という遠慮からです。親世代もまた、「心配をかけたくない」「まだ元気なのに」という思いがあります。互いに相手を思うあまり、沈黙が続いてしまう。そこには悪意がまったくないぶん、かえって難しいのです。
元気なうちにしか話せないことがあります
「この子には、この想いを伝えておきたい」「この家は、どうしてほしい」。そうした話は、判断能力がしっかりしているうちにしかできません。体調が崩れてからでは、本人の意思を確認すること自体が難しくなります。
だから私は、遺言だけでなく、家族会議や任意後見、生前対策を組み合わせてご提案しています。一つで足りないなら、複数を組み合わせればいい。その方に合った形を、一緒に探したいと思っています。
相続の話をすることは、人生の終わりを数えることではありません。これからの人生を、どう安心して楽しむかを考えることです。親世代も、子ども世代も、将来への不安を抱え込まずに済む。そんな家族が増えれば、社会はもう少しやさしくなるはずです。
遺産分割協議書は、家族の決断を形にする文書です
私は、遺産分割協議書を「事務的な書類」だとは考えていません。あれは、ご家族が話し合い、決断したことを、この形で残すと決めた証です。
一枚の紙の向こう側にある人生
同じ「不動産を長男が取得する」という一文でも、そこに至るまでには、さまざまな会話があります。介護の記憶、子どものころの思い出、言えなかった本音。それらを経て、ご家族が「これでいこう」と決めた。その決断を、正確に、そして敬意をもって形にする。これが私の仕事です。
相続人全員が納得することは、簡単ではありません。全員が100点とはいかなくても、「話をしてよかった」と思える着地を目指したい。そのために私は、書類の正確さと同じくらい、合意に至るまでの過程を大切にしています。
AIの時代に、私が譲りたくないもの
いまはAIが書類の下書きをつくれる時代です。私自身、AIを相棒として活用しています。作業は確かに速くなりましたし、この変化は前向きに受け止めています。
ただ、AIは家族の沈黙を読み取れません。言いかけて飲み込んだ言葉、目をそらした瞬間、声のトーンの変化。そこに本音が隠れていることが、どれほど多いことでしょうか。人の感情をくみ取り、その想いを言葉や書面にする仕事は、やはり人間にしかできないと感じています。
なお、相続人同士の争いが生じている場合の交渉や法律判断は、弁護士の領域です。私は書類作成を中心に担い、必要なときは弁護士と連携いたします。これは、専門家としての誠実さだと考えています。できることとできないことを曖昧にしないからこそ、安心してご相談いただけるのだと思います。
まとめ:相続は、家族の関係を確かめる機会です
財産の分け方は、法律と数字で決められます。けれど、家族の気持ちは、数字だけでは決められません。だからこそ私は、書類ではなく人に向き合うことを大切にしています。
相続の話は、切り出しにくいものです。子ども世代には、「そんな話をしていいのかな」という遠慮があるでしょう。親世代には、「心配をかけたくない」という優しさがあるでしょう。その両方を、私は否定しません。ただ、一歩だけ踏み出してみてほしいのです。
私は、相続が家族の関係を壊すきっかけではなく、お互いの思いを確かめ、これからの関係を大切にする機会になってほしいと願っています。残りの人生を安心して楽しむために、そしてご家族がその後も穏やかに笑い合えるために。そのお手伝いをさせていただくのが、感情翻訳家行政書士としての私の役割です。
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「八王子多摩相続遺言お悩み相談所」(伊橋行政書士法務事務所内)
TEL 042-678-5225
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感情翻訳家行政書士
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